本澤二郎の「日本の風景」(1600)

<難破する日本丸
 岸信介が後継者にした福田赳夫の口癖は「日本丸」と日本を船に譬えた。その日本丸が難破している。強風に遭って沈没寸前である。福田の後継者が安倍晋太郎、そのセガレの晋三を支援してきた小泉純一郎福田康夫が怒り出している。いかに安倍内閣が異常・異様な政権であるかが理解出来るだろう。自民党の右翼派閥が岸・福田派である。その後継者らが安倍攻撃を開始した。理由は安倍の極右路線に恐怖を抱いているからである。ドイツならば、ナチス政権が誕生、暴走を始めているようなものだからである。



<国会は機能不全>
 昨日も旧福田派のベテラン秘書が怒りの電話をしてきた。「国会も司法も狂っている」「それを批判しない新聞テレビだ」とわめき散らした。
 確かにその通りである。国会は国権の最高機関である。主権者の代表によって構成、立法に携わる機関だからである。
 実際は、安倍が選挙に固定した宗教票を有する公明党を配下に従えている強みだ。同党からは平和主義が消え去ってしまった。安倍の改憲軍拡・戦争する日本改造に服従している。
 維新・みんなの野党は、官邸に擦り寄って犯罪のもみ消しと隠ぺいに奔走、金魚のフンでしかない。真っ当なはずの共産党は、野党分断にいつも懸命である。
 こうして安倍の神道過激派の政治路線が疾走することになるのだが、それは隣国との緊張政治を演出して、悲願の改憲陰謀に王手をかけている。その背後を財閥が支援している。財閥のカネに言論界も息の根を止められて久しい。
 かくして軍拡路線を推進している、それは天皇国家主義という戦前回帰路線である。「侵略戦争ではない。自衛のための戦争だった」という安倍の皇国思想を現実化させている。そのための莫大な資金は、大馬鹿な黒田を日銀総裁に据えて、輪転機を回して円刷りさせるだけである。借金は膨らむ一方で、日本丸はその重さに耐えきれずに浸水している。
 日本丸の船底は大きな穴が開いている。塞ぐための財政再建が急務だが、消費大増税で対応しているものの、浸水で成果なし、である。
 国会の機能不全が、官邸の暴走政治を可能にしている。このことに自民党から共産党までが、事実上、協力している。これが正に危機的な沈没寸前の日本丸なのである。
 過去の保守派リーダーの細川・小泉・福田が怒り出して当然なのである。こんな安倍の国家主義・排外主義の安倍路線を、財閥と読売のナベツネが支えている。これに手も足も出せない国会の機能不全に衝撃を覚えるばかりである。
<司法も狂って反省なし>
 48年もの間、罪のない袴田さんを「死刑宣告」にしたままの司法の正体があぶり出されたが、それについて反省も謝罪も、いまだに裁判官・検察官から聞こえてこない。平然としている。昔なら関係者はリンチの対象であろう。
 せめて弁護士会が声明を出して法務・検察・最高裁に反省を求めるべきだが、それさえもない。それどころか検察は抗告して、ねつ造証拠で争うのだと言う。独裁国の対応である。
 最高裁について、国民の間から疑問と懸念が噴出している。
 法務検察の暴走である。一体、法務大臣は何を考えているのだろうか。正義から検察を遠ざける法務大臣では、主権者への背信行為である。
 最近の事例では、徳洲会事件に見られる。検察の標的は極右の石原慎太郎といわれてきた。しかし、彼が官邸に入って安倍に屈すると、検察の動きは止まってしまった。犯罪を放任する「正義の検察」に国民は戸惑いと怒りを隠さない。
 同じ手口を、みんなの党の渡辺も用いている、とベテラン秘書は断罪した。
 徳洲会徳田虎雄は、相変わらず「カブトク」から大金をせしめている、というのである。100億円の使途不明金は、まだ猪瀬の5000万円しか明らかにされていない。
<ワシントン・北京・ソウルもお手上げ>
 ワシントンは、安倍を国家主義者・国粋主義者という正確な分析をしている。戦後体制崩壊を目論む野心家にホワイトハウスは頭を痛めている。こんな危険な人物を日本のトップに据えたことに戸惑いを見せている。ただし、ワシントンの1%は「使い道がある」と考えて、支援を惜しまない?
 ロシアのプーチンの暴走が、オバマの態度を変えてしまった。安倍の欲する集団的自衛権行使という憲法違反を容認する代わりに、TPPでの譲歩を迫っている。安倍の悲願とした国賓待遇による来日にも応じた。むろん、信頼関係は生まれないのだが。
 ワシントンの圧力に韓国大統領も苦悩の日々を送っている。安倍を許せない、との思いは強い。それに韓国民の心情を軽視するわけにもいかない。彼女は平壌に行けばいい。だが、その勇気がない、というよりも、ワシントンの許可がもらえないのだろう。
 ワシントンの策略家は、南北対立が好ましい環境と判断している。アジア人の対立を利用している。それは日中対立にもいえる。東京に極右政権を誕生させるワシントンの野望を、軽視すべきではない。
 真の敵はワシントンの1%である。日本沈没近し、に変わりない。
2014年4月17日7時15分記