本澤二郎の「日本の風景」(1289)

憲法記念日安倍内閣
 日本が唯一誇れる平和憲法の記念日・5月3日を迎えることが出来た。このことに心から感謝したい。日本国民の良識が可能にした一大成果なのだ。これを未来永劫にわたって継続・発展させることが、アジアの平和と安定に貢献するだろう。従って5月3日をアジアや世界の人々も、共に喜んでもらいたいものだ。学んでもほしい。戦争放棄の9条で、廃墟となった日本が復興したという明白な史実を、人類は否定できないだろう。この平和主義を、安倍内閣は改悪したい、と公約して政権を担当した。戦争の出来る日本にする、というのだ。日本とアジアの重大な危機と岐路なのである。



 「戦争の出来る日本にしたい」が極右の悲願であることは、以前から知られてきた。しかし、新聞テレビや野党が反対していたため、極右の野望は具体化しなかった。しかし、いまや新聞テレビの一角が崩れた。改憲新聞は産経から読売、そして財閥新聞の日経に伝染している。
 朝日・毎日・東京の踏ん張りが求められるのだが、経営の厳しさから揺らぐ場面が少なくない。他方、議会は大きく変貌している。過去に日米安保の段階的解消や護憲を公約していた宗教政党が、安倍内閣に擦り寄ってしまっている。最近は「9条をいじる」と言い出した。安倍に塩を送り始めた。
 隣国の懸念ともなっている。平和を口にした政党の極右への支援は、日本が重大な岐路に立たされていることを意味している。反発する共産・社民は米粒ほどの存在だ。それでも彼らは解党的出直しが出来ない。野党になった民主党内にも、極右に傾倒する政治屋がこびりついている。
 戦争体験者は安倍の軍靴にいきり立っているが、高齢で結束力が弱い。近隣国やアジアの民は、日々の生活に追いまくられて、日本の変貌を正確に掴み切れていない。現在は、非常に危ういアジアと日本というのに。
原発セールスマンの極右首相>
 「主権回復の日」という復古的な記念日を強行した安倍は、モスクワへと飛んだ。北方領土問題を再スタートした後、いま中東へと足を伸ばし、さっそく原子炉メーカーの東芝の意向を受けて、原発のセールスマンに徹している。3・11への反省も謝罪もない日本の代表を務めている。
 案の定、安倍はサウジアラビアでの講演で口を滑らせた。「原発建設で協力ができる」と明言した。断じて口にしてはならない秘事を公言してしまった。これが今の安倍の精神状況なのだ。自制できない。考えていることを、直ぐに口にしてしまう。これは国民にとってありがたいことなのだが。

 小泉内閣に次いで、原発メーカー・東芝社長を政府政策の枢要メンバーに加えた安倍内閣である。今回の同行メンバーにも加わっている。既に、安倍と共に原発売り込みの具体策を開始しているに違いない。安倍の中東外交は原発の売り込みにある。財閥利権活動に首相権限を乱用していることになろうか。
 日本政治屋の多くは金もうけを目的にしているが、原発のセールスマンのおこぼれがどれくらいなのか、主権者にとって気にはなる。
<極右を動かす財閥>
 今日の首脳外交が、その実、財閥の暴利のための先導役を買っているという事実に国民は気付く必要があろう。侵略戦争時と同様だ。腐敗政治の極みだ。
 モスクワでは、シベリアのガスや石油の財閥利権に手を貸した。領土問題は二の次なのだ。安倍の後見人の森喜朗は、首相時代からシベリアの開発利権に目が無かった。事情通なら誰でも知っている。その森の敷いた利権外交が、今回のモスクワ訪問の背景だ。財閥軍団がそろって安倍外遊に同行している本当の理由なのである。
 新聞テレビはその事実を伝えない。筆者が怒る理由である。新聞テレビの腐敗が極右政権を支えているからだ。恥を知れ、といいたい。
 そもそも新聞テレビは、朝鮮戦争を契機に戦後復活、日本経済と日本政治を動かしている財閥について報道しない。財閥という言葉を消却している。こんな不甲斐ないことが、ジャーナリズムの世界であっていいのだろうか。
 一人筆者がこの財閥に警鐘を鳴らしているのだが、いずれ日本国民も隣国の民も気付いてくれるだろう。最近になって「東芝の素顔」を連載する理由でもある。白状すると、息子に教えられたのだ。
美しい国国粋主義の日本>
 安倍は日本を「美しい国」にしたい、と言っている。国民を騙す手段であることを、極右を嫌う市民は承知している。政治家の言動でまともなものは少ないのだが、この安倍発言の真意は「醜悪な」という意味が込められている。
 戦争をしない日本・戦争放棄の9条の日本、これこそが美しい日本である。隣国が核武装しようが、平然として平和主義の道を歩いて行く。こんな日本に対して、核兵器を落とす侵略国が現れるはずがない。いくら極右の面々が宣伝しても国民は信じない。
 安倍の言う「美しい国」とは国粋主義天皇国家主義の別名であろう。戦前回帰がミエミエである。大日本帝国を彼は祖父から学んできている。極右はワシントンを利用しながらも、本心は反ワシントンなのだ。岸はCIAを利用して復権したが、決してワシントン・占領の屈辱を忘れてはいない。孫も学んでいるだろう。
 その証拠が東京裁判の否定や村山談話河野談話の否定発言である。最近になって、ワシントンの新聞はこれに厳しい批判記事を書いている。安倍の正体に気付いたのかもしれない。ワシントンも安倍歓待を拒否したほどだ。
 美しい国論は、かつての占領軍諸国を言葉で覆い隠す策略とみたい。
<強い国は核保有の日本>
 なぜ安倍内閣原発を推進するのか、なぜ原発再稼働に熱心なのか。なぜ中曽根康弘小泉純一郎のように靖国神社参拝に熱心なのか。そして日本と世界、人類の理想である「戦争しない日本の憲法」を破壊しようとするのだろうか。
 安倍の表現では、それは「強い国」になるためだという。その心は核武装による「強い国」なのだ。そのために核兵器製造に不可欠な原発・原子炉は、一番重要なのである。プルトニウムを生み出してくれる原発は重要なのである。
 核兵器保有を口にする人物で知られる石原慎太郎だが、これは極右にとって常識論となっている。ワシントン怖さに口にしない中曽根を知っているが、彼の盟友であるキッシンジャー博士は、海外の首脳の前で「日本の核武装」の可能性を以前から口にしている。中曽根から感じ取っていたのだ。
 原発建設・核兵器保有は、財閥の強固な意思なのである。東芝安倍内閣の連携は、日本の将来を大きく左右するだろう。警戒するゆえんである。
<アジアは覚醒するか>
 そこで問題は、日本国民がこのことに目を覚ましてくれるのかどうか。新聞テレビに甘い日本人だ。簡単に引っかかってしまう可能性を否定できない。安倍を支持する国民が6割、7割もいるというのだから。
 そこで、次に注目されるのはアジアの民である。「戦争しない日本」「戦争できない日本」を公約して国際社会に復帰した日本である。このことに戦後のアジア諸国民は、重大な関心を示してきている。
 中国や韓国・北朝鮮は、安倍改憲内閣に対して、ようやく警戒をするようになってきている。しからばASEANはどうか。東南アジア諸国である。ここは3国の外交努力にもよる。特に中国のASEAN外交にかかっている。
アジアが覚醒するかどうか。安倍内閣と極右路線の行方の鍵を握っている。

欧米諸国の極右政権への対応も影響するだろう。ワシントン・CIAが引き続き極右政権を支援するのかどうか?方針転換をするのかどうか。

 日本の国内的な要因としては、野党の力量にもよる。相変わらず小さな党利党略のレベルで、夏の参院選に臨もうとするのかどうか。目下のところ、あまり期待できそうもない。愚かな政治屋が目立つ。

 以上はリベラル・平和主義の視点からの5・3の分析と課題である。
2013年5月2日9時40分記