本澤二郎の「日本の風景」(1474)

徳洲会事件・初の犠牲者か>
 先日、元自民党ベテラン秘書が「関西の有力代議士秘書が、徳洲会がらみで自殺したと聞いた。調べて欲しい」との要請を受けた。さっそく事情通・内部告発者に連絡、調査を依頼した。事実とすれば、この底なし沼の大事件の初の犠牲者だ。口封じであろう。単なる噂であって欲しい。人間の命は地球より重いものだから。




<正義派検事に法務大臣が支援>
 安倍・菅の首相官邸サイドから検事総長に対して「捜査の打ち止め」の指令が出ているという。想定される流れだ。だが、新たな隠ぺい工作に検察の現場は反発、やる気満々という。不祥事続きの検察庁の汚名返上が、若手正義派の心意気といっていいからだ。
 官邸の意思に忠実な検事総長は、これまでも何人もいた。ほとんどと言っていい。辞表を懐に入れて正義を貫くような人物は、いまだ一人もいない。
 しかし、徳洲会の莫大な脱税資金にハイエナのようにまとわりついた政党・政治家は、猪瀬や石原慎太郎だけではない。猪瀬の首で満足するような民衆など、このご時世では一人もいない。「猪瀬よ、真実を吐け。それが都民への責任である」という声は、日増しに強くなっている。
 他方、新聞・テレビの取材現場も、次々と表面化する犯罪事件にブレーキなどかからない。本来の競争原理が働いている。
 いい情報の一つは、谷垣法務大臣が安倍とは異なるスタンスをとっている、というものだ。法務大臣が正義派検事の味方というのだ。素人には理解できないだろうが、筆者にはわかる。
 谷垣は弁護士だ。法律に詳しい。検事総長に対して、個別の事件についてはともかく、一般的に捜査指示をする権限を有している。検事総長が官邸の駒になることに、彼は反対するだろう。もともと自民党内には「安倍ごときが」という思いがまん延している。石原と同レベルの宰相を尊敬する人物などいない。
 近隣外交をこじらせるという手段で、改憲軍拡を実現する悪しきやり口を評価しているわけではない。新聞テレビを掌握する中での高支持率に、内心は冷ややかなのである。イカサマのアベノミクスについても。

 過去に「巨悪を眠らせない」という検事総長がいたが、巨悪は座禅を組んで「般若心経」を読んで、いまも生き延びている。検事総長が正義に目覚めれば、この徳洲会事件は、政界と官界と財界の大掃除が出来る。それを熟知している谷垣である。
 かくして永田町の実権は、法務大臣の手に握られたことになる、というのだ。ありうることである。谷垣もまた、乾坤一擲の勝負に打って出たと思いたい。
国税が握った政界ルート>
 金銭にまつわる事件捜査には、警察も検事も手が出ない。分かりにくい。犯罪者には、ワルの弁護士や税理士がついて、徹底した隠ぺい工作を施しているためである。
財務省管轄の国税庁の出番である。今回の大事件には、国税も関与している。そうすることで検察は、立件することができる。彼らGメンは、検察が抑えた証拠書類から、宝の山を見つけ出す。その点で、徳田虎雄事件の鍵は国税が握っている。
 ご存知、日本は中曽根の悪政で1500兆円を消失、その結果、既に1000兆円の借金をしている。裏借金を加えると、1500兆円近くになる、と指摘する専門家もいる。
 要するに日本にカネはない。財閥は200とか300兆円の資金を懐に入れているが、これとてドル暴落や円暴落で泡になる可能性を秘めている。正に国家の非常時に、Gメンもまた正義に燃えている。そう信じたい。
 官界情報に明るい事情通は「国税徳洲会の政界レートの証拠をつかんだ」と明かしてくれた。
そのことと自民党有力者の秘書自殺と関係があるのかもしれない?谷垣は確か財務大臣をしていた。財務・国税の人脈を有している。そこから法務大臣へと報告されている、という推測へとつながる。
<石原は大丈夫か>
 「安倍と特定秘密保護法案賛成で取引した石原慎太郎」という永田町の分析も、必ずしも確定したわけではない。自民党総裁にまで登り詰めながら、石原のセガレの反乱で、その絶好の機会を安倍に奪われた谷垣である。
 安倍にとって法務大臣ポストは、面従腹背の谷垣を窓際に配する好ましいポストではあったのだが。だが、徳洲会事件は彼に政界のドブさらいという好機をもたらしている。
 うがち過ぎかもしれないが、これは永田町に精通する者であれば、大いに納得できるだろう。
 猪瀬は潰れたが、石原もどうなるのか?維新の崩壊も考えられる。維新の松野幹事長が、民主党リベラル派の細野元幹事長やみんなの江田元幹事長と連携したのも、なんとなく頷ける。
 都庁もそうだが、永田町極右がピンチを迎えている?
2013年12月1日8時15分記